ごめんね、待った?

この前コンビニでQRコード決済をしようとしたら残高が1円足りず、レジの人を待たせてしまったもずくです。

待つ、ということで私が一つ思い出すフレーズがあります。石田衣良の『娼年』という小説で、主人公が女性と待ち合わせするシーンでの女性のセリフです。

「わたし、約束の時間のまえにきて、今日はどうしようかなって考えるのが好きなんだ。だって人を待つ時間ってすごくじれったいでしょ。そのじれったいのが好き」

 

 

じれったい、という言葉には「自分には手が出せなくていらいらする」というネガティブなニュアンスがあるそうですが、彼女はその手の出せなさ、が単純に好きなんだろうなと思います。確定していない未来を空想する行為は、時間の一方通行感を感じさせて面白いですよね。待ち合わせだったりLINEの返信待ちだったり、そういう人とのやり取りを待つ時はなお良いものです。

待つのは何も人だけでなく、コンテンツにも当てはまりますよね。私は映画館に行く時は必ず予告編から観るタイプです。もちろん予告編で気になる映画を見つけられるから、というのもありますが、もう一つ理由があります。それは、スマホ中毒ぎみの私がスマホをスッとしまってこれから映画を観るぞ、という精神的な準備のためです。大きく感情を揺さぶられるコンテンツを味わうのに、頭に余計な情報を残すのは何だか良くないような気がしてしまうわけで。まあ映画を観た後に「コレジャナイ感」を感じることもありますが……

待つことにはどうしたって期待を増幅させるような効果があるんだろうなと、寒いホームで電車を待ちながら思うのでした。

それでは。